第7回  KPBライブトーク

設計者が語るKPB建築トーク ~みてほしいところはここっ!~

これからの公園の可能性についてさまざまなゲストと議論していく「KPBライブトーク」。2021年3月末の『KAKAMIGAHARA PARK BRIDGE(通称:KPB)』オープンに向けて、建設現場から9回にわたって配信していきます。第7回は、KPBの建物や遊具の設計チームが登場。KPBの建築はどのようにできあがっていったのか?必見です!

【 メンバー紹介 】

本当にKPBは『できんのか?!』

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今回、KPBの事業主は飛騨五木グループさんになるわけですが、一級建築士の井端さんがメインの設計を担当して、河合さんと冨田さんのチームに支えてもらいながら、みんなで作ってこられたんですよね?

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そうですね。最初から全部一緒に設計をさせていただいてます。

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KPBの話がそれぞれ皆さんのところに来たとき、どういう印象を持たれましたか?設計する前の段階の、最初のイメージというか。

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そうですね。今まで、「森のわくわくの庭」という施設は設計したことがあったんですけど、そこは新築ではなくて、内装の改修だけでした。でも、KPBは木造の新築だったので、ワクワクするような気持ちでしたね。

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全体の規模感もそうですし、結構な量の木が使われていますけど、飛騨五木さんの案件史上、トップクラスの木材使用量じゃないですか?

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そうですね、ここまでの木を使った建物の設計は今までないですね。

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挑戦というか、新しい試みになりますよね。その新しい試みを聞かされたとき、河合さんはどう思いましたか?河合さんのところに話が行くときには、大枠のイメージはできていたんですよね?

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最初は概要だけでしたね。『子どもの遊び場を作ろう』っていう。建物をどういうふうにしていくかは、河合さんと相談しながら進めていったところが大きいです。

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その状態で話が来たとき、河合さんはどうでしたか?

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KPBは木造で床面積1,000㎡くらいの規模なんですけど、この規模感を設計したことがなかったので、『チャンスだな』と思ったのが正直なところです。それに木造での案件はめったにない仕事なので、僕としては単純にすごくうれしいなと思いました。

これまでは住宅メインでやってきたので、不特定多数の人が使う施設を設計させてもらえるのは建築家冥利に尽きますね。

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最初に話が来たときは、単純に『やってみたい!面白そう!』と思ったのがスタートってことですね?

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そうですね。あと、学びの森で開かれていた「マーケット日和」も何回かお邪魔したことがあって、良い場所だなと前から思ってました。図書館もあるし、公園もあって、その真ん中にKPBを建てられるなんて、そうそうある話じゃないですから。『これはちょっと気合い入れないとあかんな!』という感じでしたね。『できんのか?!』っていう(笑)。

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『できんのか?!』感はありましたね(笑)。

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住宅と違って、KPBくらいの規模になると建築基準法や消防法がすごく厳しくなってくるんですね。そういったところも正直、知識不足で随分苦労しました。

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そうですねー。

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実は、最初はもう少し大きい規模の建物を考えていたんですけど、まぁはじめはそういうオーダーだったので。色々調査した結果、“床面積を1,000㎡に抑えなきゃいけない”というような苦労が…すごくありまして…。今思い出してもゾッとしますねー…。

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井端さんはどうですか?進めていく上で、苦労話がいきなり出てきましたけど。『ここは大変だったな』っていうところはありましたか?

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森のわくわくの庭の事例があったので、『それなりの遊び場の面積が欲しい』というのが会社からの意見でした。木造でそれをやろうと思うと、河合さんがおっしゃったように、法規的な制約などがたくさんあります。それをちゃんと分かっていない状態でスタートしたので、内容の二転三転が結構あったんですけど、すごく良い経験にはなったと思ってます。

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なるほど。遊具がメインの冨田さんは、話の大枠が見えてきた状態でのスタートだったんですか?

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そうですね。KPBのイメージCGを作っていて、何となく室内の雰囲気が分かっていたので、『遊具は何を作れば良いんだろう?』っていうのはありましたね。周りも公園じゃないですか。遊べるような公園がありつつ、室内で遊びや気づきを生むような設計について設計チームの皆でよく話し合っていましたね。

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我々も含め運営の皆さんで話し合うけど…なかなか出てこないわけですよ(笑)。今までの2店舗と同じものはやりたくないなーっていうのは我々の思いでもあったので、その辺はだいぶ苦労しましたね。 

飛騨牛と大工の関係性

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飛騨五木として、『KPBを木造でやりたい』という考えは、スタートのときからあったんですか?

製材機では、高速回転する帯状のノコギリに丸太を通して柱や板にスライスしていく。

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ありましたね。飛騨五木グループは山から木を伐採してくる社員もいますし、その丸太を挽いて角材や板をつくる製材担当の社員もいて、その木材で建物をつくる大工さんがいます。そういう会社って全国的にあまりないと思うんです。初期の設計の段階から『こういう木が欲しい』と製材や林業の方に依頼して、探してきてもらって、そういった連携を取りながらやってきました。

視野を広げると、今は国産の丸太の値段が下がってきていたり、質の良い丸太が建材に使われず合板になってしまったり、木が大事に使われなくなっていると感じます。ちょっと大げさかもしれないですけど、ちゃんと木の良さを活かしたKPBの空間づくりは、林業や製材の今後の“何か”を変えていけるような力があるんじゃないかなと少し思ってます。

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実際、多くの大工さんがこの施設に関わっていますよね。僕も何回かここ(工事現場)に足を運んで見ていたんですけど、皆さん常に緊急事態みたいなテンションで作業されていましたね(笑)。大工さんの、俗にいう、“匠の技”みたいな技術はKPBの建物にもありますか?

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大工の仕事はまず、材料となる木材をカットするところから始まります。現場の工事を始めるずっと前から、飛騨五木の本社では材料をすべて手で加工していくわけなんですね。これだけの本数を手でやるというのは正直、僕はできないんじゃないかなと思っていました。「プレカット」という機械で加工する方法もあるんですが、それを使わずに職人自ら加工するのはやっぱり“匠”なんだと思います。それができちゃうことに正直びっくりしちゃって!

井端さんがさっきおっしゃっていた一貫した流れを料理に例えると、飛騨牛を生産するところから始めているわけですよ!飛騨牛を生産し、それを枝肉にして、それを自分で料理して、レストランも運営もする。そこまでできる企業はなかなかいないわけですよ!

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…匠の話がどっか行っちゃいましたね…(笑)。でも、今の飛騨牛の話はすごく分かりやすいですね!

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普通の工務店は、料理人ということになります。材料を買って、加工だけする。でも、飛騨五木は材料を生産するところからやっているわけですからね。

土台部分の木材に書かれていた数字類。

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実際に僕が見て『すごいな』と思ったのは、木材に番号が振ってあるんですよ。事前に、1本1本の木をそれぞれどの場所に置くか、それを微調整しながら全部決めていったんですよね。

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そうですね。普通はプレカットの工場に木を出荷すると、番号が機械で印字されるんですけど、ここはそうではないので、手書きの数字が今もまだ残ってます。完成したあとも残るので、それを探してもらいたいなと思います。

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大工さんから『こんなのできねぇよ』みたいな悲鳴というか、突然出てきた問題はなかったんですか?

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KPBでは「金物工法」といって、木にスリットを付けて、その間に金物を入れる方法を手作業で行うことにしました。手作業での試みが初めてだったので、最初から『そんなんできるか!』というテンションだったと思います(笑)。

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いきなり、最初からだったんですね!(笑)

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でもそれを大工さんたちがやってのけて、この建物にも誇りを持ってくださっています。私たちもうれしいし、一緒にやってきた感じがありますね。

三角形を基本単位にした骨組構造である「トラス構造」。KPBを訪れたら天井を見上げてみてください。

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難題が途中であったんですよ…。KPBの天井はよく橋桁に見られる「トラス構造」なんですけど、全部15cm角のスギ材で組まれています。長さは3m60㎝くらい。材料が作りやすいからそのサイズにしているんですけど、去年の8月頭くらいにトラス構造の試作を1つ作ってもらったんですね。そしたら思いのほか弓なり状に下がっちゃって。『大丈夫か?!』ってなったんですけど、匠の技で解決策を考えてくれたんですよ!

僕らは『金物を大きくした方が良いんじゃないか』とか、そういう話が出たんですけど、結局金物は変えずに、大工さんが匠の技でその下がりを矯正してくれたんですね。経験値的に『下がらないだろう』とおっしゃっていて。…まぁ、大したハプニングではなかったということですかね、結果的に…(笑)?

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そうなっちゃいますね(笑)。

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そういうハプニングがあったときに、私たち設計が指示するんじゃなくて、大工さん側からも提案してくださるというか、大工さんも一緒に作っている感じがありましたね。

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設計士さんたちの思い描く、『こういうふうになったら良いな』という挑戦と、現場の大工さんたちのアイディアや技を使ってKPBができているんですね。

変な言い方ですけど、言葉で「木造」と聞くと簡単そうに思えてしまう。でも実際に建物を見てみると、このKPBは見たことがあるようで、見たことのない建物ですよね。たぶんこの先、誰も同じような建物は作らないんじゃないですか。どうでしょうか?

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まず、木材をちゃんと確保できることと、それを加工できる大工さんがいるということ。それが設計の初期段階から一緒にできる状況がめったにありません。普通は、設計が終わってから見積もりを出して、木材の値段の話になると思います。最初から設計と大工が一緒に作る状況じゃないと、KPBのような建物を作るのは難しいんじゃないかなとは思いますね。

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もっというと、無理に木材を使わずに、言葉は悪いですが、もっと安く抑える方法だっていくらでもある中で、そこは飛騨五木としての意地というか、会社としての使命を体現した建物だというところですかね。建物全体で、オープンしてから『ここを見てもらいたい!』というところはそれぞれありますか?

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全部じゃないですか?

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全部ですか(笑)。例えば、具体的に、『こことここの木の重なりが美しい!』とか?

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僕は外のレンガ。

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木の話じゃないやん(笑)!

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さっき長縄さんが「木造」と言われてましたけど、一括りにされがちな木造の中でもジャンルが細分化されています。例えば、昔ながらの木造だと、柱と梁の建築であったり、現代的な筋交いの少ない工法であったり。

今でいうところの木造は「在来工法」というもので、基本的に、木材が壁で覆われる構造になっています。KPBのように、これだけ木が見えている状態は、同じ木造と言ってもまったく違う。たぶん、誰が見ても、どう作られているかが何となく分かるんですよね、KPBは。『どうしてこの材料はこういう向きについているのかな?』とか『どうしてここに穴が開いているのか?』とか、『これは節なのか、鉄の棒が刺さっているのか?』とか気になってくると思います。

「飛騨五木」(スギ、ヒノキ、ケヤキ、ヒメコマツ、クリ)も使われていて、どこかに隠れています。それを探すのがおもしろいと思います。ヒントを言うと、一番多く使われているのは「スギ」です。ほとんどスギです。なので、それ以外の木を探すと、残りの4つが見えてくるんじゃないかなと思います。

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ぜひ、オープンしてからそのイベントをやりたいですね!…マニアックすぎるかなあ(笑)?

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いやー意外と分かるんじゃないですか?明らかに違いますから。僕と長縄さんくらい違いますから(笑)!

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だいぶ違いますね(笑)!

設計士も遊びたくなる遊具

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建物全体が木造なんですけども、遊具も木で作っているんですよね?

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そうですね。

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遊具の設計を考えていく上で柱となるようなものはあったんですか?

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小さい遊具をいっぱい敷き詰める、というよりは、公園ではあり得ないような大きいスケールのものをところどころに置いたら面白いんじゃないかと考えていました。あとは、奥の方にかなり巨大なネットがあったり、坂があったり、ウェーブ状のものがあったりするんですが、名前が付けづらいような遊具の方が良いんじゃないか、みたいな感じで話し合って進めていきました。

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そうなんですね。一番名前を付けづらいのはこのウェーブですかね?

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ウェーブは確かに、印象に残りそうですしね。

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僕個人の感想ですけど、『よう木でやったなー!』と。これを作る上で、新しい技術やこだわったところはあるんですか?

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たぶん、こういうウェーブの形状って、珍しくはないと思うんですね。あとは、CG上で線を描くのは簡単だと思うんです。作り方とは関係なくできるので。でも、設計しながら、『もうちょっとこうした方が良いなー』とか、あとから調整しやすいようにプログラミングしています。機械でデータを読み込んで、それをもとに木を切って、現場で組み立てるということをやったんですけど、実際に組み立てる人が迷わずできるようにしたいと考えながら設計しました。

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さっきの建物の構造と違って、このウェーブの材料はプレカットを使ってます。設計のデータを作って入稿すればその通りに機械が材料を加工してくれる。要はプラモデルですね。それを持ってきて組むだけの状態を冨田がデータまで作ってやったんです。さっき『プログラムを組んだ』と言っていたんですけど、大きさを容易に変えることができるので、例えばもう少し小さい施設の場合はウェーブのサイズを小さくしたり、曲線の曲がりを変えたり、強度を増したかったら軸を増やすとか、そういったことが3秒くらい?でできる。現代的ですよね。

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さっきの大工さんの匠の技と、ハイテクな技術が融合しているということですかね?

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ハイブリッドなんですよね、結局は…。

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…え(笑)?

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このウェーブの曲線具合はどうやって決まったんですかね?

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1つの波じゃなくて、2連にして、行き来して遊べるんじゃないかとか、1個は曲線が急なところを設けるとか、そういう違いを設けるために、どれくらいの曲線が良いかみんなでCGをもとに決定しました。さっき実際に遊んでみたんですけど、思ったよりもスピードが出て、なかなかエキサイティングでしたね(笑)。

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さっき僕、皆さんが遊んでいるのを見てたんですけど、設計した人が『うぉー!うぉー!』ってなってて、すごく面白かったです(笑)。

遊具については、設計する段階からこの曲線の曲がりでよくGOサインを出したなぁと思いました。危険と面白さとの境目が緩すぎてもダメだと思いますし。そこへの意識は遊具を設計される上で何かありましたか?

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やっぱり、子どもは実際に遊びながら、体を動かしながら、危険なところを学んでいく面は絶対にあると思うので、そこは大事にしたいと最初から考えていました。『どこまで危なくても良いのか』というラインは、社内でいっぱい議論してきましたね。

実際に私の娘が遊んでみたら、登れないだろうと思っていたところが意外と登れちゃったこともあって、『これは手すりがいるね』となって急遽取り付けました。建物をつくる会社と運営の会社が同じなので、実際に使いながら追加したり、新しくしたりできます。最初はシンプルに作っても大丈夫というか。

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個人的に良いなと思っているのは、靴箱の上でも遊べるところ。あんなの、既製品で絶対ないじゃないですか(笑)。

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ないですし、普通はお行儀が悪いって思われるじゃないですか!『人が靴を入れるところに乗っかって!』って(笑)。でも、子どもにとってはすごく楽しいと思うので、子どもがのびのびできると良いなと思います。

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家だと怒られちゃいますもんね。

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怒られますし、そういう靴箱ってなかなかないですもんねー。遊具と遊具の境界線を曖昧にしていて、どこからどこまでが遊具か分からない設計になっている。それがジャングルというか、探っていくワクワク感みたいなものを感じるんですよ。

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それはね、場所から生まれてるんですよ。良いこと言いましたね、今(笑)。シームレスにつながっているっていうのは、学びの森からKPBに入ってきたときに『あれ?ここにも芝生があるじゃん!』みたいなことですよね。気が付いたら中に入ってた、みたいなね。…まぁ、お金払うんですけどね(笑)。公園とKPBをどうやってつなげるかはすごく迷いましたね。

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KPBって両サイドがガラス張りじゃないですか。だから割と外の公園とつながっている感じもあるし、電車が走っていると全体が見えるのも、それはそれで面白いんじゃないかって思います。

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道路とこの施設の曖昧さについて、設計サイドからどういう意図があったか説明していただけますか?

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最初の設計段階から、道と建物のつながり方は考えていました。敷地いっぱいに建物を作らないと、人が来てくれるような遊び場にならないんじゃないかという話が最初から社内であったんですね。一方で、このすごく環境が良い場所に、バーンってめちゃくちゃ大きい建物を作ることが本当に正しいのかどうか、河合さんと話ながら進めてきました。

その中で、建物を少し小さくして中庭のようなスペースを作って、それらを施設と一体の場所だと考えれば良いんじゃないかという話になりました。敷地内の屋外スペースに遊び場ができれば、道路側との接点も生まれてくるので、そこに明確な境は作りたくないと思いました。

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絶賛工事中なので、これからどうなっていくのかすごい楽しみです!ベンチは結構あるんですか?

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高低差のあるベンチであったり、長いのもあり短いのもあり、背もたれがあったり、ロープがあったり。色んな要素が絡んでくるんですよ。

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ロープとかもあるんですか?!

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そうですね、一応中と外を仕切らないといけないので、その役割として入れています。柵っぽく見えないようにしたかったのもありますね。

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やっぱり冬ソナストリートをどう活かすかっていうのは最初から僕は思っていたので、そこに対して、良い回答ができたかなと思っています。

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そうなると、最初から“道”っていうのはある程度、意識していたってことですよね?

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普段から散歩されている方も多いですし、通学路になっているじゃないですか。その様子を見ていると、そこを建物で閉ざしちゃうのは…。

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ワンちゃんを散歩している人も、ちょっと疲れたなぁって言って座わったり、小学生が学校から帰るときにちょっと座わったりして使ってくれたらいいかな。日本の文化の中に「軒を貸す」みたいなものがあるじゃないですか。KPBの軒はそこまで伸びてはないんですけど、そこにそっと優しくベンチがあるのは優しいですよね。

大小は関係ない。そこに愛はあるのか?

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ちょっと大きい話になっちゃうんですけど、世の中には毎年、色んな建物が生まれてきて、全然使われなくなってしまう建物や、ずっと使われている建物もありますよね。残念ながら、使われなくなってしまう建物は、どうしても建てることや施設のオープンがゴールになっていると思います。

今回色々と話を聞いていく中で、“建てる”という段階から“使う”ことや、他との場所との連携を意識されているのはすごいなぁと感じています。もちろん今後イベントや使い方などのソフト部分が加わってくるんですけど、それができていない建物が結構多いなぁと思うんです。建物を通じて“使う”や“暮らす”をどうしていったら良いか、設計の立場から聞かせてください。

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『どうやって街とつながるか』というのは、住宅でもそうだし、KPBのような規模の建物でも考えていかなきゃいけないなと思っています。特にKPBは運営も同じ会社ですし、20年契約もあるので(笑)。その20年を見据えた使い方を、設計の初期から運営メンバーと一緒に考えながらやってきましたね。

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よくハードやソフトの話が出るんですが、これは表裏一体というか、密接なものです。“場所”はハードだと思っていて、例えばこのKPB。前提として、学びの森と市民公園という優良な場所、ハードがあったわけですね。そこに対して今回はさらにKPBというハードを付け加えていることになります。

もちろんハードだけではダメなんですね。運営つまりソフトが必要なんですけど、僕は設計している立場上、まずはとても良いハードを作りたいなといつも思っています。じゃあどういうものかというと、皆さんそれぞれだと思うんですが、誰が見ても『すげーな!』と感じるものはあると思うんですよ。例えば、社寺とか教会とか、建築だけに限らず、景色とか大きい岩とか。そういったものも、ハードの一部なのかなぁと思うんです。

じゃあ、それをどう見せるのか、ということがソフトの問題になってきます。例えば、何の変哲もない石ころでも、すごい見せ方をすれば、たくさんの人が集まるわけですよね。僕はそっち側はできない人なので、誰が見ても『美しいなー』と思う建築を作り続けるのが前提であります。

建物が皆に愛されていれば長く使われることになるでしょうし、メンテナンスも当然されると思う。建物の大小関係なく、住宅であろうが大きい建築であろうが、店舗であろうが、DIYで作った机1つでも、そこに愛があるか、というのがすごく大事だと思いますね。愛されるハード、容姿ですね、僕のような(笑)。そうなると良いなぁと思っています。

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最近思うのは、『オフィスはこうだからこういうものを設計しましたよ』というものを作ったとしても、時間が経てば世の中の使い方とどんどん乖離していっちゃうじゃないですか。時代の変化を見越した設計を入れておくことが大事になってくるんじゃないかなと思っています。色が変わったりしても成り立つようなところを1か所設けておくとか、そういった工夫は設計する上でも大事だなと思うんです。

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KPBに、冨田さんがやられている「Kiosk」というものがありまして、簡単にKioskの説明をしていただけますか?

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簡単にいうと、小屋を組み立てるようなシステムです。柱と梁と5種類のジョイントのパーツで構成されています。柱と梁のワイヤーフレームしかないので、何を取り付けるか、どういう用途で使いたいかによって、色々なバリエーションが作れます。仮設的なものなので、用途が増えたら連結して増やしていけるし、必要なくなったらバラして違うところに持って行くこともできます。

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ハードとソフトの間みたいなものですよねー。Kioskはすごく可能性があると思うので、ここに来た人はぜひ見てもらいたいですし、個人の意見としては、学びの森でいきなり展示したり、屋根を付けてポップアップしたり色々やってみたいです。使い方の幅が広がるし、一方でハードみたいな感じもありつつ、全然動かせないわけではないので、すごく良いですよね!

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既存空間の中に、もう1個空間を作るみたいな。それが仮設の面白さでもあると思います。

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絶賛売り出し中です、Kiosk!

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今日、色々と話を聞いてきましたけど、KPBは木をたくさん使っているただの木造ではないぞということが聞いていただいた方には伝わったんじゃないかなと思います!お子さんたちが遊んでいく中で、課題があったらカスタマイズして、オープンすることがゴールではなく、少しずつメンテナンスを繰り返しながらやっていくようなKPBになると思います。

最後にですね、それぞれKPBに対しての思いや言いたいこと、見てほしいところをいただいて、本日は終わりにしようかなと思います。

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たぶんこの遊具は、端から端まで通り抜けて遊ぶとすごい面白いんじゃないかな。エキサイティングな坂を登って、最後に圧倒的なネットにダイブするのは面白いはず。たぶん、それは公園じゃできないことです(笑)。

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KPBは本当に色んな人の力が終結してできた建物で、設計はそんな難しいものではなくて、実際に現場で作る方が大変だなと僕はいつも思っています。今回、すごい短い期間で施工をやっていただいて、大工さん以外にも職人さんというのはまだまだいますし、皆さんのおかげでできているなぁと改めて実感しました。

今回は我々が表に出てきていますけど、出てきていない人たちが作り上げたというか、それがこの場の空気感に宿っているんじゃないかなぁと思いますので、それをぜひ、見ていただきたい!…と、何か締めにかかっちゃった感じになって、申し訳ない(笑)。

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最後に一級建築士の井端さんが残っていますので(笑)!

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子どもにとってモノの仕組みを考えることがすごく大事だなと思っています。例えば、蛇口をひねったら水が出る、スイッチを押すと電気が消える、そのスイッチは電気とつながっているんだな、とか。

今の時代は、トイレも水が勝手に流れちゃうし、手をかざせば水が流れるし、モノの仕組みを考える機会がすごく減っていると思うので、ここにきて、『どうやって建物ができたのかな?』と考えたり、遊具で体を動かして自分だけの遊びを見つけたり、新しい発見をしてくれるとうれしいなと思います!

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3月27日のオープンに向けて、皆さんに最高の空間を届けれるよう、最後の準備を頑張っていけたらなと思います。ぜひ皆さん、お楽しみに!ということで、第7回のトークイベントを終わらせていただきます!ありがとうございましたー!

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ありがとうございましたー!


第7回アーカイブ:https://youtu.be/3wrbvxC36sc

第6回

第8回